韓国では「能力開発」や「英才教育」という単語をあちこちで見かけます。これだけでも学習に力を入れているのを感じます。
今回の記事の学校の話については、うちの子供たちが通っている小学校、それから知り合いの韓国人の達が通っている学校のことを中心に書いています。（釜山方面です）
地域差はあると思いますが、ソウルの方はもっと激しいと聞いています。一体どんな現状なのでしょうか。
※この記事で言う［塾］は学習塾もピアノや運動系も含まれますが、比率としては学習塾に通っている時間が多い子がほとんどです。
コチラの記事も内容が重なる部分があるので読むと理解が深まります。
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- はじめに
- 小学5年生なのに掛け算９９ができない？！
- 塾通いは当たり前の韓国の学生たち
- 一部の子達は基礎ができないままの先取り学習
- 親はなぜ子供を塾に通わせるのか？（子供が小学生の場合）
- 子供達のやりたいこと
- 授業中に塾の宿題をしている学生
- 一日の学習時間
- 授業中に寝ている学生達
- 学生の帰宅時間
- 生徒を注意できない先生
- 先行学習禁止の法律（公教育正常化法または先行学習法）
- おわりに
はじめに
韓国人は、目の前の人の学歴が実は高かったと知ると、いきなり接する態度が変わるくらいの学歴重視社会です。
なので、人となりを学歴で判断されることがあります。
そんな社会で子供の将来の幸せを願って塾に通わせ、子供の塾代を稼ぐために共働きしている家庭もたくさんあります。韓国は目の前のことしか見えなくなってしまうほどの学歴社会であり競争社会であることを理解した上で、記事を読んでいただけたらと思います。
流れに逆らうのが大変なほどの激流です。子連れで韓国に移住して、この大変さがやっと分かりました。
小学5年生なのに掛け算９９ができない？！
●小5息子の話し
小4の時に息子が言っていました。（息子は現在小5）
息子：「韓国の子達って掛け算９９を覚えていない子が沢山いるんだよ」
私：「ホント？！（心の声：そんなことないでしょ。大げさだな。）」
息子：「指を使って足し算してた！」
私：「出来ないのはその子だけでしょ？」
小5息子：「違うよ！他にもたくさんいるよ」
私はこの時は半信半疑でした。息子がちょっと大げさに言っているだけだろうと。でも、新学期が始まって少ししてからの担任の先生からのお知らせアプリでの連絡に『掛け算９９を覚えてくること』と書かれているのを見て、息子の言っていたことは事実だったと分かりました。
だって掛け算９９を覚えていない子が1人2人程度なら、わざわざ全体にお知らせをしないだろうから。
●小３娘の話し
小3娘：「友達ね、みんな掛け算できないよ！」
私：「あなたも覚えてないでしょ…💦」
小3娘：「でも私よりできないんだよ。私は家で頑張ったけど、みんなやってないんだよ！私も少しけ忘れちゃったけど、友達は全然できないの。本当だよ！」
私：（心の声：それは去年の担任がYouTubeばかり見せてちゃんと授業をしていなかったからでしょ…）
日本では掛け算９９は小学校で無理やりにでも覚えさせられますよね。韓国も以前はそうだったようなのですが、どうやら今は先生によって違うようです。
そして、娘の言う「みんな」も、周囲の２・３人だと思いますが。。
そして、小3になった娘の担任の先生からもお知らせアプリで連絡が来ました。『掛け算９９を覚えてくるように』と。
お知らせアプリについてはコチラに少し書いてあります ⇓ ⇓ ⇓
塾通いは当たり前の韓国の学生たち
韓国は先行学習が当たり前です。
「半年先位まで予習していたほうが良い」と言う人もいれば「1年先まで勉強するのは当たり前」と言う人もいます。２～3年先の勉強をしている子も珍しくはありません。
小5・小6で塾に通っている子達は、中学生や高校生の数学を習っているのが普通です。
すごい優秀な子は、小学生4年生で大学レベルの内容を学習している子もいました。
※経済的に豊かな家庭の方が塾にかける費用は多く、片親だけが働いている家庭よりも共働き家庭の方が塾にかける費用は多くなります。（韓国統計庁より）
一部の子達は基礎ができないままの先取り学習
韓国では先取り学習が当たり前なので、子供を塾に通わせる親たちは先取り学習をさせていないと不安なようです。
でも、例えば数学においては基礎が出来ていなかったら先のことを理解するのは難しいですよね。掛け算99を覚えていなかったら答えを導き出せない💦掛け算99を覚えていない小学5年生が先取り学習しているって・・・小学生は、先取り学習するよりも基礎をしっかり身に着けるほうが大事な気もしますが、不思議すぎます。
水に浮くことも上手くできない子に「泳げ！」と言っている感じ？
何か間違えていると思うのですが、大人たちは忙しくてそれに気づかないのかもしれません。
塾で把握してあげていないのかな？という疑問も湧いてきます。
親はなぜ子供を塾に通わせるのか？（子供が小学生の場合）
勉強が好きな子もたまにいるので、そういう子はどんどん勉強させたら良いと思います。
でも、実際には勉強が好きで自ら進んでする子はほとんどいません。
ではなぜ塾通いをさせるのでしょうか？
理由①レベルの高い大学に行かせるため
子供をレベルの高い大学（主にソウル大学）に行かせたい親たちが、とにかく先行学習をしていれば勉強が出来るようになると思って塾に通わせているパターン。
理由②子供の負担を軽くするため
先行学習をしておけば、学校で学ぶ内容は復習だから簡単に感じるだろうと思って親が塾に通わせるパターン。
理由③親の安心のために塾に通わせる
周囲が塾に行かせているので、塾に通わせないと自分の子だけ落ちこぼれると思って不安になり塾に通わせるパターン。
理由④塾で先行学習するのが当たり前と思っている
先行学習が当たり前なので、塾に通うのは当たり前と思っているパターン。
理由⑤友達を作るため
塾に行けば必ず同学年の子達がいるので、友達との交流のために塾に行かせるパターン。
理由⑥親の帰宅時間が遅いので通わせる
両親が共働きをしており、子供が親の帰宅時間まで帰宅しないで良いように塾に通わせるパターン。
理由⑦成績が良くないので補助学習として通う
家庭で教えられない場合は塾など外部の専門家にお願いするしかありません。
理由⑧試験で学校での学習範囲外の内容が出たら困るから、対策としての塾通い
入試に教育課程で習う水準ではない内容が出題されることがあるので、学歴社会韓国で勝つには1問も落とさないように塾に行くしかない。
学校に行く必要ないんじゃないかと思えてきます。親も大変。子供も大変。
子供達のやりたいこと
小5の息子が話していたことです。
学校で先生が生徒たちに質問しました。大きくなったらやりたいことは何かと。
そして「ソウル大に行く！」と答えた子が半分以上だったらしいです。
自分がソウル大に行きたいと思っているのか、親の願いを言っているのか・・・しかも、その先のやりたいことや夢がない。
息子が友達に将来の夢を聞くと、ほとんどの子が答えられないそうです。週末も塾通いして勉強のできる子達ほど夢がない。息子の周囲にだけ偶然そんな子が集まってしまったのかもしれませんが、夢もなく休日も塾に通って好きでもない勉強をしている子達がいるというのが現実です。
また、小5息子の友達に勉強はちょっと苦手だけど絵をすごい上手に描く子がいます。本人は絵を描きたいのに親御さんから「そんなことより勉強しなさい」と言われるから描けないそうです。
授業中に塾の宿題をしている学生
塾にたくさん通っている子達は、塾の宿題をする時間がありません。そういう子達は、学校の休み時間や授業中に塾の宿題をやっているそうです。たまに友達に手伝ってもらったりもして。
そして、先行学習をしている子達は学校の授業内容はすでに知っているので、授業はつまらないから聞かなくても良いと思っているようです。確かに、知っているんだから聞かなくても良いのかも？？
息子が小4の時のクラスにも授業中に寝ている子はいないけど、本（漫画本も含む）を読んだり他の事をしている子はちらほらいると言っていました。
一日の学習時間
下の表は、韓国統計庁による2009年の学生の学習時間の調査結果です。（ご覧になる方は、少し下に行ったところにある虫メガネマークをクリックすると見れます。韓国語です。）
〈曜日別学習時間と学校内別学習時間〉（単位：分）
| 平日 | 土曜日 | 日曜日 | ||
| 学校 | 学校外 | |||
| 小学生 | 3:53 | 2:16 | 1:11 | 1:12 |
| 中学生 | 4:29 | 2:51 | 2:42 | 2:18 |
| 高校生 | 5:17 | 2:40 | 3:50 | 3:48 |
学校外の学習時間が高校生は2時間40分となっていますが、やらない子達も含めての平均です。でも、私の周囲の高校生を見ていると、塾通いしている子達はもっと勉強時間が多いように感じます。
塾は12時過ぎまではしご通い、塾がなければ図書館やカフェで勉強。集中できるんですかね？ 「すごい」と言う言葉しか出てきません。
大人には休日があるのに、子供達には休日はあってないようなものなんですね😿
私は中高生の学生生活については詳しくありませんが、小学生であっても塾に10個以上通い（通わされ）、週末も塾に通っている子達は少なくありません。
小5息子の友達は、平日は3つの塾に行って、週末も塾に通っているそうです。
授業中に寝ている学生達
特に高校生は塾に行って帰宅時間が遅いため、昼間は眠くて授業中はお昼寝タイムになっているようです。
居眠りしている子は中学生になるとちらほら居て、高校生になると授業中に堂々と寝ている学生達が増加するそうです。
初めてこの話を聞いた時は『大げさに話すな』と思いました。でも、みんな同じことを話すので、どうやら本当らしいです。うちは子供がまだ小学生なので、中高の教室内で起こっている詳しい状況は分かりません。
それなら塾に行かないで早くに寝て、学校の授業中に学習する方が効率良いし心身の健康にも良いと思うのですが、そういう生活にはならないんですね。
そして勉強時間が多すぎて運動する時間がないので、韓国の子供たちは肉付きの多い子が沢山いるんです。
小学生の肥満についてはこちらの記事をご覧ください⇓ ⇓ ⇓
学生の帰宅時間
地域差はありますが、小学生は暗くなるくらいには帰宅している印象です。塾の後、友達と遊んで帰宅する子もいれば、20時くらいまで塾に通って帰宅する子もいます。
中学生になると塾の終わる時間が遅くなります。22時くらいに帰宅したり、もっと遅くまで勉強している子達もいるようです。
高校生に至っては大学受験があるため、24時以降に帰宅することもあります。日付が変わってからの帰宅です。嘘みたいな本当の話です。それは学校の授業中に寝るしかないよね、って感じです。
私が知り合いの家庭に泊まらせてもらった時、高3のお子さんが10時半に一時帰宅し、次の塾があると言って果物を食べてそそくさと外出していきました。韓国の高校生の塾通いの話は本当だったのか！と衝撃を受けました。帰宅時間を聞くと、12時過ぎとのことでした。
遅くまで塾通いしているのはその家庭だけではなく、大半の高校生が同じです。
勉強が好きではない子にとっては、拷問のような学生生活ですね😿これをこなせる韓国の学生たちがすごいです。やるしかないのだと思いますが、ストレスがたまりそうです。
生徒を注意できない先生
居眠りしている生徒に対して学校の先生は何も言わないのか疑問に思い、知り合いの韓国人数人に聞いてみました。
すると、先生は寝ている生徒を起こしたり注意しないとのことでした。理由としては、そんなことをしたら親が怒って苦情電話をしてくるそうです。「うちの子は塾で遅くまで頑張って勉強していて眠いんだから、起こさないでくれ！」と。
学校には寝に行っている？
先行学習禁止の法律（公教育正常化法または先行学習法）
韓国では試験に学校では習わない内容のものが出題されることがあります。そういう問題を正確に解くためには塾に頼らざるを得ません。
これが塾通いや先行学習を煽る一因であると考え、2012年9月、パク・クネ（박근혜）政権時に先行学習を禁止する法律が施行されました。공교육 정상화 촉진 및 선행교육 규제에 관한 특별법［公教育の正常化及び先行教育の規制に関する特別法（公教育正常化法または先行学習禁止法）］という法律です。
公教育正常化法では、学校では先行学習を禁止し、既定の学習内容をしっかり身に着けさせなければならないとした内容です。
しかし塾などの私教育の現場においての規制は、先行教育をしているという広告を禁止しているだけで、先行教育をすることは禁止していません。意味ない…と思うのですが、憲法の関係上、私教育での先行教育は厳罰化できないようです。例え塾で先行教育の広告をして塾生を勧誘したと摘発しても、処罰規定がありません。
『学校での教育課程の範囲と水準を外れた内容を出題してはならない』としているようですが、それでも出題されることがあるようで、塾通いほ歯止めがききません。
塾に通うことで家計を圧迫し、子供達のストレスは増える一方です。これを改善するための法律なのに、意に反してこの法律が施行されてから、塾にかける費用は増加し続けているようです。
2014年9月12日施行した法律はこちらで確認できます。韓国語なので翻訳してご覧ください。⇓ ⇓ ⇓
공교육 정상화 촉진 및 선행교육 규제에 관한 특별법［公教育の正常化及び先行教育の規制に関する特別法（公教育正常化法または先行学習禁止法）］
おわりに
私が家族で韓国に移住した時、子供は小3と小1でした。
先行学習のことをあちこちで当たり前のように話しているし、したほうが良いと言われるので、韓国語がだいたい分かってきた段階で息子に算数の先行学習をさせてみました。塾ではありません。問題集を購入し、私が教える家庭学習です。
結果、息子「授業で知っていることを話すからつまんない」と言うようになりました。息子に関しては韓国語が出来ないくせに成績は平均以上というこれまた不思議な状態だったので、それ以降は先行学習はさせていません。算数で分からない部分があったら家で教えたり、YouTubeを見て学んだりしています。
私はこれで十分だと感じているのですが、これを教育熱心な韓国の人に話すと「それでも先行教育したほうが良い」と言います。こんな時はどんな反論をしても無駄なので、他の事をして会話をストップします。
でもテストをすると、うちの息子は全科目平均以上で成績上位です。半数以上の子は成績を上げるための先行学習をしているはずなのに、韓国語が完璧じゃない外国から来た子が成績上位ってどいういうこと？と思ってしまいます。ちなみにうちの息子、日本でも勉強はできる方でしたが、すごい勉強が出来る子というわけではありません。
小5息子が「学習塾に通っていない」と友達に言うと、みんな羨ましがるそうです。
先日は小3娘が家に帰ってくるなり「ママは良いママみたいだよ！」と言ってきました。理由を聞くと「学習塾に通わせないから」とのこと。
［学習塾に通わせる・通わせない］がどんな親かの判断基準として重要な要素になる程、子供達にとっては塾通いがストレスなのだと感じました。
以前、既に子供は社会人になっている方が話してくださいました。「周囲に振り回されて子供に勉強ばかりさせたけど、結局は何も残らなかった」と。頑張りに見合ったものが残らないただの学習地獄だったようです。
健康で、生活費とたまに遊べる余裕がある分だけ稼げて、幸せに暮らせればそれで良いかなと思うのですが、それを想像することさえとても難しく感じてしまいます。韓国は結婚しない人も増えているので、これからも色んな社会問題が出てきそうな気がします。
今の子供たちが親になったら、きっとその子供たちにも同じように塾に通わせるのかと思うと、結婚して子供を作ることが怖くなりますね。だって、自分が親になったら塾の費用を稼ぐために働かないといけない。このループから抜け出すのは簡単ではないようです。
韓国人が結婚しない理由は少子化の記事をご覧ください。⇓ ⇓ ⇓
日本と韓国の学校の違いシリーズ⇓ ⇓ ⇓
